防音製品の誇大広告を見抜くことが必要(2015年2月号)

現在、多くの防音材など防音製品が市販されています。なかには効果を誇大広告して、売るためだけのPRをしているウェブサイトもあります。
その典型例として
・遮音シート
・鉛のボード、遮音パネル
・軽量で薄い防音材
などという製品やキーワードを見ると、信頼性の薄い情報が沢山出てきます。100歩譲って遮音効果があるとしても、木造防音室に使うと音響的に最悪の状況になる鉛ボード・遮音パネルは、ピアノなどの音環境を悪化させるだけでなく、隙間からの音漏れによって、想定される遮音性能を発揮できないケースが多発しているようです。

建築士も安易に防音製品を貼り付けるだけの仕様を施工業者に指示したり、遮音シートを重ねれば防音効果が向上すると鵜呑みにすることが多い。現場の効果を検証した事例も知らない、実績もないなど、製品の効果を体験したこともなく、まるで素人同然のレベルで、防音室を設計するケースが少なくありません。

なぜ、このようなことが起きるのか。建築の専門業者として勉強不足はもちろん、防音材の使い方もわからないなど実践経験がないことが致命的な欠陥としてあると思います。
大学時代も建築実務においても、誰も防音設計や音響について教えてくれることはなく、建築学会や音響学会の会員ですら、実際の木造家屋で設計したり、現場を検証することが少なく、事例でさえ、ウェブサイトに殆ど出てこないという業界の現実があります。

木造住宅やマンションなど一般住宅における防音対策や防音室の事例を解説したページも少なく、多くが音楽スタジオ・ホール、工場の事例であり、壁や天井の分厚い金太郎飴の防音室の事例ばかりです。
設計というよりも防音製品のメーカー申告データを鵜呑みにした事例が大半です。これでは、誇大広告の問題点を理解することもできないでしょう。

音響・防音設計、施工に万能なものはありませんので、現場の状況に応じてフレキシブルに検討し、リスクを回避しながら、費用対効果や室内の空間を狭くしない防音設計を追及することが重要です。少なくとも建築や音響・防音設計のプロは誇大広告ぐらい見抜く力を身に着けることが必要条件だと思います。