想像だけで防音効果を見誤るリスク(2015年3月号)

私が運営する防音職人や知人建築士が運営するウェブサイトに寄せられる相談、問合せの中には安易に想像や思い込みだけで施工した防音工事や製品選択の失敗事例が毎年のようにあります。

そのベストファイブに、次の3つの事例があります。
・マンションのGL壁や木造住宅の内装壁に遮音シート(厚さ1.0~1.2ミリ程度、面密度2.0~2.2kg/m2程度)を直接重ねてPB張り・クロス仕上げにしたが、殆ど効果がなかった。
・GL壁や振動しやすい空洞壁に鉛のシート、鉛ボードを重ねて施工したが振動騒音に効果がなかった。
・壁の内部にグラスウール(密度16~24kg/m3程度)を充填したが殆ど効果がなかった。

これらは担当者が実際に現場で検証したこともないのに、想像や思い込みだけで対策を検討し施工したことによって起きるものです。
音響学会の研究者でさえ、いまだに振動騒音対策に鉛が有効であると思い込んでいる者もいます。
建築士の中には発泡スチロールやスチレンフォームを吸音材・遮音材として考えている者もおり、誤った対策方法を情報として垂れ流しています。

実際に自分が担当した工事現場を音測定や依頼者の体感報告などで検証していれば重要な経験としてストックされるわけですが、実践的な検証を行っていない、防音の基礎知識すら学んでいない担当者にはわかるはずもないリスクです。

さらに、遮音ゴムなど製品の施工仕様でさえ間違っているメーカーもあり、製品の費用対効果以前の問題として気づいていないケースもあり、防音設計・施工の担当者として悩ましい問題も潜んでいます。
使い方を間違えれば防音効果の出ない周波数帯の音もあります。

いずれのリスクも大半は、経験豊富な専門家であれば事前に気づくことができるはずです。机上の理論を過信している研究者には盲点となることが多いものです。
*参考情報:遮音パネル・遮音シート