音響と遮音効果(2015年7月号)

木造家屋でもマンションでも防音室を造る場合、最も重要なのは音響です。これをコントロールすることは音漏れ軽減にもつながります。

そして部屋の構造・広さや間取り、周辺との空間的なつながりなどを考慮して、音響・防音対策の方針を決めることが先決です。方針を間違えると見当違いのことに時間と費用を無駄にすることになります。

たとえば、コンクリート構造のマンションの天井、壁、床に遮音シートを張ることは意味のないことです。もともと面密度の高い、空気音を遮断する性能が高いコンクリート構造の建物には、柔軟性のある制振材や吸音材を使うことが重要であり、密度の低い遮音シートは最も向かない製品です。
また、鉛シートの遮音パネルは反響がきつくなる割に、固体音を抑える能力がなく、とくにグランドピアノやチェロの防音室に使うと、ほぼ致命的な失敗をすることになります。

木造家屋の場合は、まず合板などの一般建材で壁や床を構造的に補強することが耐久性だけではなく、遮音性も向上させることにつながり、合わせて相性の良い防音材を使うことで、質量則を超えた防音効果が生まれます。

狭い部屋の場合、音響上の処理が重要であり、表層の仕上げを柔らかい吸音性のある木材で造ると、音響的に落ち着いた感じになり、音漏れも軽減されます。
木材を活用すれば、クロス仕上げも容易であり、羽目板仕上げにも適した工法となります。もろい無機的な音響化粧板に頼る必要もないのです。

最悪の仕上げは、鉛シートを貼り付け、そのうえから石膏ボード・クロス仕上げとすることです。音響がほぼ最悪の状況になります。
建物構造の特性や木材の特長を知らない業者には良い防音室を造ることはできません。