遮音・吸音効果と空気層(2015年8月号)

マンションの天井防音や防音室の間仕切り壁など界壁、戸外側の外壁内装における防音壁の設計・施工と音測定データ、および他の研究者のデータを勘案すると、吸音材と空気層による遮音効果(防音性能)に一定の法則が存在することが分かっています。

■周波数と空気層
今までの古いマニュアルでは、一律に空気層を設けるとすべての音の周波数帯で吸音効果が向上し、結果として遮音効果の高い構造に寄与するということでした。
しかし、概ね200Hz以下の音域では厚さ200ミリ程度以下の空気層において、効果は頭打ちになるだけでなく、逆に共振などにより遮音低下する現象が起こることが分かりました。
*空気層がバネのように振動するような現象です。

例えば、マンションの天井裏では、吸音材のない空気層は低音域では逆に共振して遮音性能が低下するという現象が起き、これが現在のマンションの共通した弱点になっています。

■吸音材と防音効果
約100ミリの空気層をもつ界壁を生活防音や防音室の壁として設計する場合、上記の内容を適用すると空気層だけの場合より、吸音材を充填したほうが吸音率も向上し、遮音効果はアップします。
古い遮音設計マニュアルにも明記されていますが、界壁内部に吸音性のない発泡材(発泡スチロール、ネダフォーム、スチレンフォームなど硬質断熱材)を充填すると、逆効果になり、遮音性能が2ランク以上低下する場合がありますので、要注意です。

現場での音測定や依頼者の体感からすると、中途半端な空気層は吸音材ですべて埋め尽くしたほうが遮音効果が高くなります。とくに周波数が高くなるほどその傾向は顕著になります。
このように古い設計マニュアルや吸音材メーカーの公表データとは異なる傾向の周波数帯や現象が見られます。
これは実践経験や音測定データを詳しく分析するなど、現場経験から補正していくことが、極めて重要であることを示しています。