新築木造住宅のチェロ防音室(2015年9月号)

新築木造住宅において、チェロの夜間演奏が可能な防音室を計画中のかたからアドバイスを求められました。その概要は以下の通りです。

(相談者のご質問)
「木造新築で、防音室の設計で、壁は構造用合板(28mm)、窓は二重窓で遮音できるのではないかと建築家から提案されています。これで十分な遮音性能を持つかアドバイス頂ければと思います。」
「ちなみに、楽器はチェロです。深夜12:00まで演奏したいと考えています。」

という相談ですが、ほかの専門業者にはD-45レベルの遮音性能が必要だと言われたそうです。

(私の回答)
隣家が数メートル離れている程度では、二重サッシュだけでは無理です。壁の遮音性能も最低でもD-55以上は必要です。
提案した建築士やほかの業者では失敗すると思います。
壁に張り付けるだけの対策を提案すること自体が無謀です。おそらく音響・防音設計の基本がまったくないということでしょう。

二重サッシュで対策する場合は、出窓のように内窓の間隔を広くとり、ガラスの厚さや建具の材質などを検討する必要があります。
また、チェロは床に振動音を伝えるので、床下からの音漏れや壁の共振を軽減する対策が同時に必要。もちろん、天井の防音施工も必要です。天井裏から外壁側に音が抜けていくからです。

自宅内部への音漏れを許容するのであれば、戸外にほとんど漏れないような対策に重点を置き、外壁面には内装防音壁を構築したほうが良いでしょう。
それも出来る限り、薄い構造で造ることがベストです。

私の設計・施工事例では防音壁は約92ミリです。施工実績は、東京都内および周辺部の住宅地において、木造防音室(チェロ・ヴァイオリン)が3件完成しています。依頼者より音響・防音効果共に良好ですとご報告をいただいています。
そのときの遮音性能は天井・壁がD-55~58、二重サッシュ面がD-46~48です。 二重サッシュの間隔はフカシ枠を取り付けて大きくしました。