木造音楽室の相談事例分析(2019年11月号)

他の専門業者が失敗した木造防音室の仕様を分析すると、大半が遮音パネル(既製品)とグラスウール、石膏ボード、遮音シート(厚さ約1ミリ~1.2ミリ)を中心に構成されていることが分かります。

また、壁の遮音性能は確保されていても、音響が悪かったり、床などから固体伝播音(振動音など)が近所や隣室に響き渡る事例が多く、木造や床の制振構造を理解していないことが状況を悪くしているようです。

相談事例を分析すると、防音設計の際に必要な留意点が見えて来るので重要な手掛かりになります。

木造は遮音性能が低いという思い込みが、過度な遮音材にシフトした仕様になり、一方で床からの固体伝播音や室内の音響調整を軽視することにつながっています。

木造は適度な音の吸収と音響調整機能を持っていますので、これを保持したうえで、防音構造を検討すべきです。
事例を見ると、防音壁や天井・床の厚さが20センチ以上のものが多く、これでは音楽室が仮に10帖程度とすると、施工後には8帖程度になるなど、非常に狭くなります。

また、使用する建材や防音材が硬質なボード類を多用していることから、音を吸収したり制振する能力が弱くなる一方で、反射音が強くなる弊害が生じます。
これらは使用する資材の問題、防音設計そのものに問題があると思います。

既製品をすべて否定するつもりはありませんが、石膏ボードや遮音パネル、グラスウールなどを多用する工法は改善すべきと思います。