防音設計と木造音楽室(2020年4月号)

想定外のいろいろな要因によって、防音設計・工事の現場や相談案件に大きな変更が生じています。このため、いつもの「防音職人だより」の投稿が少し遅れました。

一方、ネット上の「住宅などの防音設計」や「木造ピアノ室など音楽室」に関する専門業者や通販業者のウェブサイトは乱立状態であり、他の専門業者のコンテンツを切り貼りしたような情報ページが、キーワード検索の上位に出ているのを見て考えさせられました。
また、私が防音設計を始めた25年前頃には、現在ネット上のキーワード検索で上位に出てくる防音材販売および音楽防音室施工業者の殆どが存在していませんでした。そもそも、「音響・防音設計」は大半がコンクリート・重量鉄骨構造の大規模音楽ホールや録音・練習スタジオの設計者ばかりであり、住宅や木造音楽室の防音設計マニュアルが存在していませんでした。

このため、業界における防音設計マニュアルの最新版が存在せず、後発の業者による誇大広告や間違った情報がネット上に氾濫する事態を招いています。

専門家や研究者が、このような状況を看過することは業界の信頼性を低下させるだけでなく、一般ユーザーへの不利益につながると判断しました。
そこで、最も誤解されやすい「木造軸組在来工法による音楽室・防音室」および「木造住宅の防音設計」の留意点や基本事項を、私なりに整理してみようと考えています。

主な論点は次のとおりです。
・断熱材の周波数帯における吸音特性、遮音材(石膏ボードを含む)のコインシデンス
・木造軸組在来工法のピアノ室の特長(通気及び換気構造と防音構造を区分しやすいので木造の寿命が永いことなど)
・専門業者の工法と問題点(通気・換気遮断のリスク、コンクリート増設や乾式浮床工法、無駄に分厚い構造など)
・音響と防音構造の基本(床の完全防振は木造の特長を損なう。適度に響かせることが重要)など

木造軸組在来工法のピアノ室は「建物全体で鳴る楽器のようもの」という音響上の特性を念頭に入れて考察したいと思います。
この特設ページ(別の情報サイト)は、出来上がり次第、当ホームサイトおよびブログでお知らせする予定です。