近接している隣家に夜間でも迷惑がかからないように厳重に防音対策を行い、プロのピアニストが、スタインウェイのグランドピアノを気兼ねなく、大音量で弾ける音環境を構築するための防音室でした。(ある地方都市の木造住宅+診療所に併設するもので、リフォーム工事として実施)

問題点として、隣家に接近している壁面の窓を潰す代わりに明かり取りを設けること、24時間換気が音漏れの弱点にならないように配慮すること、予算の制約の中でD-60以上の遮音性能を確保することが前提にありました。

防音の全体計画として、壁4面のうち1面を杉板(無垢材)張り及び床面を杉板フローリング仕上げとして音響調節を図るとともに、壁と床の下地に振動を絶縁・軽減する制振材を入れる。
24時間換気はピアノ室天井から縁側の天井に天井裏を通して抜き、明かり取りを兼ねた出入り口を二重サッシュで構築する。
さらに、予算軽減と室内を広く使うため、薄い防音壁を内装に構築することにしました。
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地方の現場であり、施工を担当する業者が本格的な防音工事の経験がないため、専用の防音材以外は、すべて通常のPB・合板・吸音化粧板、気密テープで施工できるように配慮しました。

この現場では費用軽減のため、隣接する縁側や隣の居室を音の緩衝・減衰空間として活用し、縁側を換気計画の中に取り込みました。

苦労して出来上がった防音室は、担当した職人が驚くほどのピアノの大音量が鳴り響く中でも、戸外では殆ど聴き取れないほどのかすかな音になり、その防音効果にも驚いたようです。
依頼者のプロのピアニストのご報告では、ピアノ室は音がよく伸び、すばらしい音環境になり、音漏れは床下換気口(通気口)から、かすかに聴こえるレベルなので夜間でも暗騒音にマスキングされて問題ないようです。(残念ながら依頼者との約束で写真などを掲載できません)

ちなみに、依頼者のご報告からD-60以上の遮音性能が確保されたことは間違いないと思います。プロが演奏すると、スタインウェイのグランドピアノは、500Hzにおいて115~120dB程度の音が出ますので、壁の遮音性能はD-65程度あると思います。
防音壁の厚さは既存の壁部を除いて仕上げを含めて90ミリ~100ミリです。