防音材の性能表示の問題(2025年1月号)
通販業者や防音専門業者が掲載している防音製品の性能表示は信用できるのかという問題ですが、実際に現場で施工すると性能表示より防音効果が非常に小さいという事例は少なくないです。民間・公的機関の防音製品の試験データと現場での効果が乖離する主な要因は「施工要領が間違っている」「試験体の拘束条件と規模が現場と異なる」「試験に使用した防音製品の不正加工」です。
防音材の施工要領
実は、大手防音材メーカーが公表している施工要領には重大なリスクが有り、現在(2025年1月)まだ修正されていません。
主な内容は、「防音材のつなぎ目処理」と「壁及び床の共振絶縁指示の欠落」です。
このため、遮音欠損が大きくなるとともに、床の振動音など固体音が壁に回り込むと同時に共振して遮音低下します。
ほぼ致命的なミスになります。
したがって、大手メーカーの性能表示と現場の効果は乖離します。
防音材試験体の拘束条件
試験体はつなぎ目のない小さなサイズのため、実際の現場における大きな区画との明確な違いは、つなぎ目の有無と軸組の区画規模など拘束条件です。
防音材は共振を抑える下地構造が重要なため、基本的に試験体と現場の構造の違いによって防音効果に差が出るのは避けられません。
出来る限り遮音欠損を抑える施工要領が重要になります。
防音材の区画が大きくなるほど、構造体の面は共振しやすくなるので、性能表示よりも想定値を余裕を見て加算する必要があります。
性能試験の不正加工
これは有ってはならないことですが、某メーカーと防音設計が専門の建築士の証言によると、試験場で用意される試験体(防音製品)と市場で販売される製品が異なるという不正行為です。防音材の材料配合や複合製品の一部を変更することによって、異なる防音効果が計測されることになります。
ただし、試験実施後に材料変更が諸事情で行われた防音材が、結果的に性能低下となる事例が多いようです。
このため、意図的な不正加工だと断定することは難しいと思います。
一番多いのが、輸入する原材料の高騰によって、リサイクル材料の配合を増やした結果、性能ダウンになるケースです。塩ビなどの樹脂やアスファルト製品において起きている事例だと思われます。