音の周波数・素材の特徴を踏まえた防音構造

tokuchou04人の声、楽器・車の音など空気を伝わる音、コンクリートなど固体を伝わる音には周波数特性があります。 音の特徴、防音材の特性を考慮した設計が重要です。

住宅・防音室においては、音の周波数、天井・壁・床などを構成する素材や空洞部(空気層)における音の減衰や共振回避、遮音効果などに着目した 設計・施工が必要です。力任せに遮音材を多用し、空気層を大きくとる手法では、構造への過大な負担をかけ、空間を狭くすることになり、費用も嵩みます。

防音職人では、音・素材、空気層などの特性を考慮して、効果の高い防音材・工法を適用することによって、薄い・コンパクトな防音(空気伝播音、 固体伝播音の遮断・減衰)を実現しています。

例えば、人の声でも子供や女性の声は周波数が高いため、空気伝播音の防音に、高い周波数における遮音能力(透過損失)が低い素材を使用しても効果的ではありません。音の主成分・種類に対応して計画しなければなりません。
→周波数など楽器の特性を考慮する:ヴァイオリン防音室の場合

また、ピアノの周波数帯は、約30Hz~約4200Hzと楽器の中でも非常に幅広く、かたよった周波数の防音仕様は音漏れの原因になります。例えば、石膏ボードと面密度の低い遮音シートのみの対策では、低音と高音が弱点になります。

ちなみに、鉛のような制振性・吸音性に乏しい遮音材は、音の反響や共振が酷くなる場合があるだけでなく、つなぎ目からの遮音欠損が弱点になりやすいため、木造のピアノ防音室には向きません。木造家屋には、相性の良い防音材、周波数特性の異なる複数のボードを使用することが効果を高め、快適な音環境の構築につながります。

建物構造・間取りを考慮したフレキシブルな防音対策

top_image03廊下、隣室や収納スペースなどによる音の減衰効果、隣家との距離を活用すると、防音対策が有利になります。

高い周波数の音は、音源からの距離が大きくなると、十分に減衰させることができ、吸音材などの活用で大きな防音効果を出すことができます。また、低い周波数の音でも、経路に音を遮音・吸音する層を設けることで遮音効果を高めることができます。

たとえば、防音室(対策を行う部屋)は、収納・建具、家具、楽器などの空間構成・配置を検討してから、防音壁・天井、下地補強などを決めます。

音が減衰する緩衝空間として、廊下(縁側を含む)、隣室、収納(納戸、物入れなど)を活用すれば、防音材の使用量を減らしたり、構造を薄くすることが 可能になるわけです。費用も軽減することができます。生活音や楽器音は周波数帯の特徴を持っていますので、音の周波数特性は、空気伝播音・固体伝播音ともに防音対策において、最も重視すべき手がかりなのです。

適切な下地処理の計画と補修

木造住宅は、一般的に床の剛性や外壁などの防湿対策に手抜かり・弱点があると、結露や床の騒音共振が悪化することがあります。建物の快適性・寿命、防音性を高めるには、見えない部分の床下、下地などの処理を丁寧に行うことが重要です。

tokuchou03例えば、1階のグランドピアノ防音室では、床下の軸組みや束、下地合板の補強が重要であり、床の共振を軽減するだけでなく、建物の耐久性を高めることができます。構造壁の場合は、パネル工法で耐力と遮音性を補強できます。

防音職人では、遮音層と防湿層を兼用する工法で、下地やボードの上に全面的にカバーし、床や壁の補強、防音壁などのベースを構築します。この上で、構造合板や軸組みによる補強を行うと共に、吸音材や制振材の施工を行い、内部結露や音漏れ、遮音欠損を防ぎます。
また、リフォームなどの下地ボードの欠損箇所にはコーキングなど補修材を充てんします。
これは、新築でもリフォームでも補強は可能であり、予算の許す限り、建設的な御提案を行っています。見えない部分の施工こそ、職人の技術と防音設計の工夫が生かされるべきところだと思います。