楽器の防音室を設計施工する際に、楽器の周波数特性や音響などの特徴を考慮するのは、コンクリート構造であれ、木造であれ共通して重要なことです。
気を付けなければならないのは、ヴァイオリンはピアノに比べて小型の楽器であるという先入観から、思わぬ失敗をする業者がいます。それはヴァイオリンは弓で弾くものであり、その弓の長さと演奏者の身長を忘れて、天井の低い防音室を造ってしまうと、音響が悪くなるだけでなく、立って演奏する際に弓が天井に当たるということや当たらなくても精神的なストレスになり、思い切って練習できなくなるなど問題が出ます。
実際にそのような失敗事例のご相談をお受けすることがあります。
しかしながら、天井や音響上の失敗は、防音室の一部を解体しなければ改善できない場合もあり、演奏者の音の好みも含めて、防音計画は慎重に検討する必要があります。
以上の内容も含めて、音響・防音設計上の留意点は次のようなことが考えられます。
・床面から天井面までの高さは2メートル20センチは欲しい。
・音響上の調整の余地を残すため、壁を過度にデッドにしない仕上げにする。床は家具やラグなどで調整できるので、合板フローリングでも問題ない。
・250Hz以上の音域が中心となるので、防音対策には吸音層や吸音材、吸音性のある素材仕上げが有効である。
・音域が比較的高いので、隙間対策は重要である。また、吸音材としてはグラスウール(吸音率が低い)は適さない。
・遮音材にシフトした仕様、壁を必要以上に厚くする必要はない。目安としてはグランドピアノが9:00~21:00の時間帯に普通に演奏できる程度の遮音性能を確保する。
必要以上に室内を狭くするような設計・施工は、ピアノ防音室と同様に必要のないものである。天井も余裕をもって高さを確保することが望まれます。