音響・防音設計の分野で最も遅れているのが木造防音室であると言われています。それは大半の専門業者が壁などの遮音性能D-50を構築するために、150ミリ~180ミリ程度の分厚い防音壁などを施工するのを見れば明らかです。

例えば、約6帖程度の部屋を厚さ180ミリ程度の防音施工で構築したら、約4.5帖の防音室になってしまい、空間的な価値や楽器・家具の配置自由度が大幅に低下し、音響的にも悪影響が出ます。
そこで、防音職人は普通の木造住宅を約41ミリという薄い音響・防音構造でD-50遮音性能を実現し、音響的に落ち着いた防音室を構築することに成功しました。

41ミリ音響・防音によるD-50ピアノ・ヴァイオリン防音室の実現

今まで比較的狭い部屋のD-50防音室を諦めていた人でも、現実的なコストで薄い防音施工によってピアノ教室や趣味のピアノ・ヴァイオリン防音室を、木造住宅などにおいて実現できるのです。
この技術革新は、厚さ80~95ミリ程度の防音壁においてD-55~D-60の遮音性能を無理なく達成できることを証明しています。
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今まで、厚さ41ミリの防音施工では、D-50木造防音室は実現できないと業界では言われていました。しかし、防音職人は多くの現場実績や音響防音設計の研究により、限界を超える設計仕様を確立しました。

防音室のリスク回避と業界への挑戦

防音室業界が今まで薄い高性能な音響・防音施工を実現できなかった原因は、素材(防音材を含む)の持つ周波数特性を踏まえた相乗効果、コインシデンスの回避対策について研究してこなかったことにあると思います。
それは、費用対効果の小さい遮音パネル(鉛ボード、樹脂ボードなど)、遮音シート(厚さ1.0~1.2ミリ程度、面密度2.0~2.5kg/m2程度)、遮音ゴムパッキンに依存し、石膏ボードとグラスウールを重ねるだけの古い遮音設計マニュアルに支配されていたからです。
そこには技術革新も何もないのです。あるのは遮音低下のリスクと費用対効果の低い、無駄に分厚いだけの防音工事です。

また、木製ボード活用と防音材との相乗効果について追及しなかったことが、薄いコンパクトな費用対効果の高い防音室の実現を遠ざけていたと言えるでしょう。
私は、鉛ボード、遮音シート、グラスウール、石膏ボードなどの弱点や問題について多くの実験データや担当現場の音響測定データなどを突き合わせて検証してきました。
古い設計マニュアルの補正をしながら、独自の音響・防音設計および施工技術を追及してきました。

厚いだけの防振ゴムが特定の周波数に共振するなど同調する弱点があることを見抜き、防振ゴム脚の二重床システムの弱点、空気層・発泡材の共振現象に早くから着目していました。リスクを回避するための独自の防音設計マニュアルを補正して作り上げたのです。

防音室の技術革新は基本原則を生かすことにある

音響・防音設計の基本は、「遮音」「制振(防振、絶縁)」「吸音」の3つの基本機能を組み合わせることにあります。
この3つの機能を追求することが、薄くて費用対効果の高い防音室を構築することにつながったのです。古い設計マニュアルでも基本原則は生きており、これを最新の技術や製品を活用して補正すれば、新しい設計マニュアルに生まれ変わります。

石膏ボードや合板でも遮音特性は異なりますので、製品ごとの特徴や組み合わせ方を開発すれば、費用対効果は高まります。
高価な防音材ばかりを多用する必要はなく、無駄に厚い力任せの防音工事も必要ありません。