ここでは建築業界の一般住宅や木造防音室の現状について、概略を述べます。知人の建築士や防音相談に私のもとを訪れる建築士、施主から紹介された建築家・建築士との打ち合わせ、相談業務を通じた状況、ネット上の建築士などのウェブサイトの情報を分析したものです。

音響・防音設計の取り組み

現在は、音響・防音設計の分野は主に音響学会が専門的な研究を行い、建築学会では個別の研究会及び小委員会程度で研究を続けているのが現状です。このため、建築学会に属する建築家・建築士は、とくに住宅や木造家屋の防音対策の見識は極めて乏しく、防音設計の実務ができる建築技術者は限定されます。

一方、音響学会の研究者は一般住宅や木造家屋に適した防音施工の工法に対する理解が乏しく、実際の現場を担当する機会もほとんどありません。このようなちぐはぐな状況が、住宅などの生活防音、防音室の設計・施工に対応できないという、大きな原因となっています。
音楽ホールや大学の音楽室などを設計した実績のある建築士でさえ、その知識は乏しく、遮音性能不足の住宅・小規模な防音室を生み出し、裁判や調停を施主に起こされトラブルとなっているケースが少なくありません。

防音職人では、できる限りわかりやすい事例や情報発信に努めるとともに、防音相談において微力ながら施主・設計者双方からの相談に対応しています。

住宅防音の基本と問題点

建築全般に言えることですが、住宅の防音対策の基本は、遮音・制振・吸音の3つの機能を複合化させることです。
建築士も施工業者も、ほとんど、この3つの機能について理解せずに、遮音材にシフトした設計・施工をしたり、断熱発泡材を吸音材と混同するなど致命的なミスをすることもあります。
隙間だらけの建具を設計したり、障子に遮音性能があると思い込むなど、我々専門家からすると信じられない現実があります。
*建築教育の問題、学会の縄張り意識や連携不足、建築士制度の問題が背景にあると思います。

住宅の防音設計は、空間や構造的な制約が多いため、薄くて費用対効果の高いものが求められますので、大規模建築やスタジオ防音室などに比べて難しい面があります。現場などの実践経験が非常に重要な分野です。
市販されている防音材は、実際の現場で使用するとメーカー申告の遮音性能や吸音率と大きくかい離することも珍しくありません。これを考慮して安全側で遮音性能を設定する必要があります。これは設計指示・工法によっても防音効果に差が出ます。

住宅の生活防音や防音室を専門業者に依頼される方は、上記のような現実があることを念頭に慎重に業者を探さなければならないのです。