この事例は、中古マンションの比較的狭い一部屋をヴァイオリンが夜間練習できる防音室に改造するものでした。
工事費用を抑えるため、既存の床や間仕切り壁は壊さずに、うえから直接、防音施工するという前提条件があり、二重天井についても、既存下地は補強して生かす方針で防音設計・工事を行いました。
このため、遮音材・吸音材を厚く施工することは、下地の耐久性や建具などの制約があり無理でした。
そこで、制振・絶縁材を下地に貼り付け、サウンドブリッジを極力遮断しながら、既存面から約20~25ミリほどふかす対策にしました。天井裏は、空洞部の共振を軽減するため、隙間なく吸音材を充てんしました。
また、室内の過度な反響を抑えるため、天井仕上げは吸音化粧板、床はタイルカーペット仕上げとしました。
完了後1ヶ月が経過してから、依頼者からご報告があり、比較的夜遅くまでヴァイオリンを弾いても、近隣世帯からのクレームは全くないそうです。
薄い防音構造であっても、音響、共振、サウンドブリッジなどに配慮した内装、相乗効果が期待できる防音材の組合せによって、想定に近い遮音性能を実現できたのです。
*参考:楽器特性を考慮したヴァイオリン防音室