木造ピアノ防音室などピアノ教室、練習室の鉄則と言うべき留意点を改めてまとめます。
キーワードは「木造軸組在来工法」「石膏ボード二重張り」「遮音パネル」「遮音シート」「音響」「コインシデンス」です。
木造軸組在来工法とピアノ室
木造軸組在来工法は、ピアノという特性にマッチした最適な構造です。同じ木造でもツーバイフォー工法の場合は床と壁が構造的に共振しやすく防音効果が伸びにくいだけでなく、音響調整に苦労します。
国内外のプロピアニストが指摘する「木造在来工法の建物は全体で鳴り響く楽器のようだ」という意味は、木材の特長と軸組の適切な補強などが生かされて初めて優れた音響と防音効果が発揮できることを示しています。
軸組・表層材の無垢材や針葉樹合板、軟質シージング板、吸音材、制振材、遮音材が総合的に構築されることによって良質なピアノ室が実現されます。
*参考:ピアノ室と防音材
石膏ボード二重張りは逆効果
最も安くて多用される遮音・不燃材は石膏ボードです。この製品は基本的に低音と高音域が弱点で固体音(ピアノなど振動音)を伝えやすい建材です。
石膏ボードを二重張りすると、コインシデンスと呼ばれる質量則を大幅に下回る遮音低下が起きる周波数帯が低い方にずれ、一重張りのときには目立たなかった周波数の音漏れが顕著になります。相乗効果がでないだけでなく逆効果になる場合があります。
しかも、ピアノ室の反射音が非常に強くなり音響が悪化しますので、この製品は必要最低限に使用することが重要です。多用する業者は専門家ではありません。
遮音パネル・遮音シートの施工
遮音パネル(鉛ボード・ALC・樹脂ボードなど)の共通した弱点はジョイント部(つなぎ目)からの音漏れです。反射音も強いので、普通はピアノ室には使用しません。費用対効果が低くなります。
面密度の小さい遮音シート(厚さ1.0から1.5ミリ、面密度:2.0~3.0kg/㎡)を石膏ボードや合板の間に張り付けても殆ど防音効果はアップしません。このことは日本音響学会の実験や防音職人の相談・調査業務でも明らかになっています。施工するだけ費用が無駄になります。
上記のような低レベルの遮音シートを重ねて施工する業者は、石膏ボードやグラスウールを多用することと同じく、専門家ではありません。防音設計の基本を知らない業者です。