木造ピアノ室の浮床工法(2023年4月号)

別の記事でも触れていますが、ピアニストが木造軸組在来工法の建物を好むのはピアノの音響とマッチする最適な構造だからです。
これを台無しにして、わざわざ基礎の土間コンクリートの上に直接「湿式浮床工法」または「軽鉄の乾式浮床工法」を施工するのは、問題があります。

これに対して、床・壁の制振および絶縁処理をした設計仕様・施工は対極にあるもので、建物全体に適度に音を響かせながら防音効果のバランスを確保する工法です。
しかも、浮床工法よりも薄い防音構造で構築できます。ただし、24時間防音は無理ですので、ピアノ室を近所へのリスクが少ない所に配置する必要があります。

木造ピアノ室における浮床工法のリスク
床に使用する「断熱材」や「防振ゴム」は不同沈下を起こして床のきしみや共振を起こす場合があります。
また、床の反射が強くなるため、音響の最適化が難しくなります。
不具合が起きた場合に、補修工事がとても難しく、最悪の場合は解体してから、やり直しになるリスクがあります。

このため、私の依頼者の施主には、費用対効果や将来のメンテを含めて、浮床工法はお勧めしていません。
さらに、床にモルタルなど湿式浮床工法を十分な養生期間を確保しないで施工すると木部が湿気で痛みます。
床材の床鳴りの要因にもなりやすいので注意が必要です。

木造ピアノ防音室は、完全防音を目指すのではなく、配置計画や音響を重視してリスクのない所に構築するべきです。
*新築であれば、間取計画の段階から、専門家のコンサルティングを依頼したほうが良いと思います。
費用対効果と音響の最適化がバランスした工法が望ましいと、私は考えています。