楽器の特性による防音対策(2013年10月号)

楽器の特性を考慮せずに、金太郎飴のような画一的な提案と概算をセットでPRする業者がいますが、それは間違っています。

楽器の演奏家や調律師などは、体験上、楽器ごとに考慮すべき対策や音響上の調整事項は何が重要かがわかっています。

たとえば、同じ弦楽器でも、チェロとヴァイオリンでは異なります。周波数の音域が異なるだけでなく、前者は床に置いて演奏するため、床や壁の防振対策や共振の回避が課題となります。質量則だけで遮音材にシフトした施工を行っても、音漏れの目立つ防音室、不快な共振が起こる音環境になるというリスクがあります。

また、ピアノの場合は床材に杉板を使用するピアニストが多く、楽器によって伸びる音、反響する加減が好みの状況にチューニングされることを望みます。下地構造だけでなく、表層材の仕上げ・素材選択により、音色が変化します。

防音対策の検討に当たっては、演奏者やクライアントの希望を十分に聴き出し、提案する仕様・空間計画に反映させることが重要です。

今年の秋から来年にかけて、主要な防音材の値上げが予告されています。防音室は、ますます高価なものとして、我々、防音設計担当者の見積りを悩ませます。
遮音材などに過度に依存する設計・施工からの脱却が望まれます。
それだけに、楽器の特性を考慮して重点的な仕様を使い分けることによって、コスト低減を図ることが必要なのです。