木造在来工法と防音(2020年7月号)

関連する記事は、当サイトでも投稿してきましたが、改めて少しずつ「木造軸組在来工法の建物と防音」について、今後投稿していく予定です。

木造住宅には大別して、「木造軸組在来工法」と「ツーバイ工法」があります。

前者は伝統的な日本の木造家屋の工法であり、後者は近年増えているパネル工法です。軸組工法は柱・梁・大引きなどの木材の軸組で構造的な補強を行いますが、ツーバイ工法は床のベースパネルの上に壁を構築するプラットフォーム工法で軸組と一体的に造られたパネルによる構造補強を行います。

後者の方は構造的な補強はやりやすいのですが、新築後の間取り改造や音響上の弱点があるなど制約があります。前者の軸組工法は軸組の剛性が不十分だと耐震性に弱点が生じます。

ですが、軸組工法は適正な軸組部材の補強を行えば耐震性も問題なく構築できるだけでなく、ツーバイ工法に比べて床と壁の共振が小さいため、音響上は有利です。
特に、この特性はピアノやチェロ、コントラバスなど床を共振させる楽器の音楽室にはマッチします。
*ツーバイ工法はパネルそのものが共振しやすいことと、床の上に壁を構築するため壁と床が同時に共振します。

木造建物は以上の基本的な特長を考慮した上で、防音計画を策定します。

さらに、木造軸組在来工法は、壁内・床下など内部空間に吸音材を充填しやすく、リフォームにおける後付施工も可能です。新築でもリフォームでも防音対策を行いやすいということが最大のメリットです。
*軸組内部の空間を有効活用できる

グランドピアノにとって、適度な吸音性と音響が得られる工法は、非常に有利であり、練習室や音楽教室として向いています。木造軸組在来工法の建物は、建物全体で必要な防音性能と音響を確保することが基本になります。
以上の内容をいくつかまとめると、木造軸組在来工法の特長は「音響的に有利」「内部空間を無駄なく活用できるので部屋が狭くならない」ということが言えます。

個々の設計手法に関する方針や留意事項は、別の機会に投稿したいと思います。
*参考ページ:木造軸組在来工法のピアノ室・音楽室