合板の遮音性・コインシデンス(2020年8月号)

木造住宅やマンションに限らず、生活防音や防音室の設計・施工に際して、費用対効果と施工の難易度を考慮すると、専門的な防音材を多用するよりも、一般的な建材を多用するほうが確実です。

防音材と一般建材との相乗効果を考えるためにも、主な建材の遮音性やコインシデンスを熟知することは有益です。本稿では一般的なラワン合板と石膏ボードの共通した特性、留意点について述べます。

石膏ボードは耐火性を前提とした仕様が不可避なことが多く、建築士も石膏ボードが有力な遮音材という認識が有り、多用されます。しかし、石膏ボードは厚くするとコインシデンスが顕著になり、低い周波数帯にコインシデンス周波数がずれることになり、今まで気にならなかった周波数の音漏れが体感されることが多く要注意です。
*硬質な遮音材はALCも同様に複数の遮音低下が起きやすく、厚さ50ミリ未満の硬質遮音材は想定外のコインシデンスや防音効果の伸び悩みが起きます。

これが面密度の高い柔軟性のある専門的な防音材との異なる特性です。

一方、ラワン合板は、厚さ5.5から6ミリの材は2000Hzまでは右肩上がりの透過損失を示し、4000Hz以上でコインシデンスによる遮音低下が起きますが、非常に費用対効果の良好な建材です。

また、ラワン合板は、石膏ボードと異なり、厚くするとコインシデンスが緩やかになり、遮音低下の落ち込みがほとんど無くなるという点が重要です。
同様にラーチ構造用合板(針葉樹合板)は、比較的柔らかい合板のため、剛性と粘りが強くなり、重ねると遮音効果が向上します。

以上のような特徴は、木造住宅などの生活防音や音楽防音室の設計・施工には極めて重要な事項です。合板は石膏ボードに比べて音響への悪影響が小さく、音楽室の施工には適しています。
柔らかいシージングボードと併用すると、専門的な音響板を使用しなくても音響調整が可能になります。
*石膏ボードと併用することは防音効果にプラスになります。

さらに、無垢材との相性が良く、木製品の活用は今後も大いに可能性のある分野だと思います。とくに新築住宅や音楽室には重要なテーマだと思います。
*参考:木造ピアノ室の防音