防音設計の基本知識(2024年9月号)
防音とは
防音の3要素とは、「遮音」「制振(防振)」「吸音」です。この3つの機能が総合されたものが、「防音」の機能(性能)です。
この3つの機能は、単独で成立するものは殆どなく、通常は複合的に組み合わせて使います。これらを複合的に構築するものが防音設計です。実際に工事で構築されるものが「防音構造」と考えれば良いでしょう。
*例えば、「共振」による遮音低下は、空気伝播音、固体伝播音の両方に起きます。それは空気の振動もあるからです。この場合は、「制振」「吸音」の両方の機能が必要になります。(騒音のメカニズムを理解しないと適正で効果的な対策はできません)
遮音材の周波数特性
また、遮音性を高めるには、遮音材の特徴(周波数特性)を考慮する必要があります。共振しやすい遮音材は、制振材などと併用することが適切です。
遮音は、防音設計の基本ですが、単一の遮音機能だけでは解決できない問題が、住宅や楽器の防音には沢山あります。複合的な構造が弱点を補い、相乗効果を高めることにつながります。
防音職人では、防音について、上記のように整理していますが、専門書や研究者によっては、用語の使い方に多少の違いがありますが、大切なのは防音構造・機能について、正しく理解することです。基本的な用語の解説は、多くの専門サイトでなされていますので、当サイトでは省略します。
ちなみに、防音材や楽器、騒音の周波数特性、相乗効果・遮音欠損を考慮しない設計・対策などナンセンスですので、専門業者の選定の際にはご留意ください。
*例えば、特定の周波数帯で遮音性・制振性が弱い素材を、いくら重ねても効果は余り上がりません。費用対効果の低い構造になります。
【住宅防音の留意点】
住宅では構造的な制約があるため、過大な遮音材にシフトした防音構造は重量・コストなどが問題となります。空間的な制約もありますので、出来る限り薄くて、比較的軽量な対策が必要です。この点が、オフィスやホテルなど大規模施設の設計と異なるところです。
住宅の防音では、特に制振(防振)、吸音の扱い方が重要です。他の記事でも採り上げていますが、遮音材=遮音これはほぼイコールと捉えても良いと思います。制振=制振材ではありません。同様に吸音=吸音材でもありません。
*例えば、構造用合板は遮音性能・制振性能がある建材です。このように防音材でも一般建材でも複数の機能を持っている資材が少なくないのです。
*このことが分からない専門家は、本当の防音対策のプロ・研究者ではないと思います。例えば、吸音性は遮音材にも制振材にもあるからです。総合的な組み合わせ・構造の中で出てくるものです。遮音材にも吸音率があります。その典型的なものが木材です。
建築の専門家は、住まいの耐久性・安全性・快適性に加えて、防音材を含めた素材の特性や長所・短所を知っていなければなりません。狭い分野のみの知識と経験だけでは、住宅の生活防音は出来ません。また、現場の施工に関わる職人からの意見などをくみ上げ、設計や材料選択などに反映させることも、費用対効果アップには重要なことです。