防音材選びの留意点(2024年10月号)

2024年9月末現在、市販されている製品を含めて、専門的な防音材の種類は増えています。
それらの半分以上がリサイクル素材を活用しています。

主な製品は、PETウール(吸音材)、高密度フェルト(緩衝材・制振材)およびアスファルト基材、樹脂(塩ビなど)、合成ゴムです。
このうち、注意を要するのが合成ゴムで加工された遮音ゴムマット・シートです。

リサイクルゴムチップを混ぜて加工した遮音材は、品質・密度などのバラツキがあり、想定した性能を得られないことが多いだけでなく、劣化スピードが樹脂に比べて早く、耐用年数が短いため防音効果が経年的に低下します。

また、成功した実績の乏しい大手メーカーの製品を鵜呑みにすると手痛い目に遭います。
*参考記事:防音材を選ぶための重要事項

防音材の施工要領
2024年9月現在、市販品を含めた防音材の施工要領をまとめた資料は公表されていません。私の知る限り、そのような資料を持っている専門業者・専門家はいないと思います。

現場で防音材の効果や施工状況を分析しないと検証は出来ないと思いますが、防音業者や通販業者の大半が間違った説明書をウェブサイトに掲載しています。
中には、コインシデンスで遮音低下する周波数帯をごまかしたり、表示から削除しています。弱点を隠すようにしてホームページなどに掲載しています。

どんな優れた防音材でも、施工要領が間違っていれば、防音効果は落ちます。一般的な建築材との相乗効果を分析しないのは、非常にもったいないことだと思います。

通常の防音工事は建築材と一緒に防音材を使うわけですから、具体的な施工要領を作成しないのは、メーカーだけでなく専門業者の怠慢です。

市販の防音材の性能不足
市販の防音材の主な問題は、固体伝播音に対する性能不足と、硬質遮音材のコインシデンスの有無を隠していることです。

通常、硬質遮音材は、質量則の計算式のようなキレイな右肩上がりの透過損失を発揮することはありません。必ず複数の周波数帯における遮音低下が起きます。

また、重量衝撃音に対する減衰効果がある防音材でも単独では不十分です。市販品において重量衝撃音に効果のある製品は未だ確認されていません。大半が軽量衝撃音対策です。

普通は、重量衝撃音を減衰させるためには複数の防音材を併用し、一般的な建築材と合わせて複層構造を構築しない限り無理です。
効果の乏しい防音材を重ねても費用対効果は低くなります。

私はメーカーの看板の大きさを全く信用していないので、自分の現場で試すか、メーカーと取引している建築士にヒアリングして判断していました。
今まで検証した資料・実例は、貴重な私の財産となっています。
この記事が、建築士や施主などの参考になれば幸いです。