専門業者の防音設計には欠陥がある(2019年8月号)

防音職人のウェブサイトには、防音設計の基本は「遮音」「制振(防振)」「吸音」の3つの機能を複合化することだと明示しています。

ところが大半の専門業者の設計・施工には、制振・絶縁が欠落したり軽視されています。ある大手の専門業者が取り組んだ防音室では固体伝播音がほとんど軽減されず致命的な欠陥となっています。
*防音職人の相談でも典型的な事例があります。

遮音にシフトすることにより反射音がきつくなるという弊害が生まれ、音漏れが目立つ周波数帯が生じるなど費用対効果の低い構造が見られます。音響の最適化も難しくなります。

これは木造に限らずマンションにおいても共通した問題であると思います。マンションにおいては固体伝播音の遮音能力(減衰・絶縁性能)が低いと実害が出ます。階下など近隣への音漏れによって、音の被害者が出るからです。

また、石膏ボード・遮音パネルやグラスウールを多用すると、低音域と高音域に弱点が生じ、無駄に分厚い防音構造で対処することになりますが、いたずらに空間を狭くするだけです。
*これは素材・製品のもつ周波数特性(透過損失、吸音率、音響)、工法的な弱点を考慮していないからです。

既製品や質量則ばかりに依存すると、音響・遮音性能や工法的な弱点に気づかず、現場で補正する技術がおろそかになります。古い遮音設計マニュアルを補正しないで使用するのは完全な時代遅れと言えます。
*参考:薄い防音構造(木造)