古い遮音設計マニュアルと最新技術(2021年4月号)

私の26年間の防音設計経験と研究を振り返ると、古い遮音設計マニュアルや失敗事例、防音材の内部資料は極めて貴重な資料と言えます。

これらは、現在はネット上の検索では殆ど出てきませんので、書籍などの文献を入手しない限り見ることが出来ません。防音施工の失敗事例や防音材の弱点について説明している資料は、設計・施工を担当した会社やメーカーがすでに削除しているので、入手は不可能に近いです。

一方、書籍化されている古い設計マニュアルや、専門雑誌の技術レポートについては、バックナンバーを図書館(国会図書館含む)で検索して、必要なページをコピーできます。私は独立開業する数年前に国会図書館や専門誌のバックナンバーが保管されている資料室で借りてコピーしました。

また、約15年前までは、古い貴重な事例やメーカーの試験データもネット上で入手することが出来ましたので、その当時に様々なキーワードを駆使して検索してストックしました。
そして、自分が担当した防音工事現場の精密測定を取引先に依頼して自腹で必要な音測定分析をしました。

これらの経験則や内部資料をもとに、机上の理論を補正して新しい防音設計技術を作りました。これが現在の「防音職人」の担当現場やコンサルティング業務において活かされています。

古い情報であっても「定石」や「基本理論」は現在でも通用するものが少なくないです。新しい防音設計技術は既往の事例や既往のマニュアル、防音材の試験データなどを考慮して作り上げるものです。いきなり、新しい技術を根拠もなく生み出すことは出来ません。

先人の知恵や研究・経験を正しく継承して、自分自身の研究成果・実務経験などを加えて総合的に分析して、初めて生み出すことが出来ます。
机上の理論を補正することによって正しい技術に更新することが出来るのです。新しい技術は一朝一夕では作ることは出来ません。
地道な努力が不可欠です。ネット検索だけでは必要な情報すら揃えることは難しいのです。