防音材と建築材の組合せ(2021年3月号)

今まで、当ブログでは「素材に透過損失(遮音性能)の特性」があることを繰り返して投稿してきました。そして、周波数帯ごとの透過損失は素材など固体差があり、組合せ方によって、防音効果に大きな影響を与えます。

質量則を下回ることもあれば、上回ることもありますが、それは机上の理論では想定できないことが多く、経験則として組合せ方を学ぶ必要があります。
このため、担当現場の検証によってフィードバックさせて、理論値を補正することが重要です。

たとえば、石膏ボードは複数の遮音上の弱点があり、比較的薄い硬質な板状の建築材としての特性を持っています。複数の周波数帯における弱点が類似している素材を重ねても防音効果は伸びません。

逆に、特性の異なる防音材や建築材を組合せることによって、弱点を補完し合うだけでなく、相乗効果を生み出すことができます。
これが薄型の防音設計の基本的理論、法則です。

また、周波数帯ごとの透過損失だけでなく、板状の建築材の剛性・粘り強度によっても、床・壁面の防音効果は変化します。

防音材を過剰に使用しなくても、一般的な建築材を活用することによって、防音効果は向上します。これは単純な質量則の計算式では予測できません。

特に木造の防音設計では、以上の内容を熟知しているかどうかで、防音構造の費用対効果や空間の有効活用に大きな差が出ます。これがコンクリート構造の防音設計と異なる点です。

無駄に分厚い防音工事を行う業者は、上記の内容を知らないため、同じことを繰り返します。金太郎飴と同じように、メリハリのない設計・施工をしてしまうのです。

費用対効果は防音材と建築材の組合せ方や工法(施工要領を含む)によって左右されます。