狭い木造ピアノ防音室(2023年6月号)

狭い木造のピアノなど音楽防音室は、4面の壁面がある場合、例えば「隣室のご家族の寝室との界壁および戸外側の防音壁だけ標準防音仕様として、これ以外の内壁をある程度、音が抜けていくように薄型の防音壁とする」などの配慮が必要です。
約8帖以下の狭い防音室は、壁4面をすべて標準防音仕様で施工すると反射音がきつくなりやすく音響の最適化が難しくなるためです。
*狭い木造防音室は4面の防音壁のうち必ず1面は音を逃がせるように調整することが重要です。

壁面全てを分厚い防音構造にする専門業者が居ますが、この方法は狭い木造防音室には問題があります。費用対効果も低くなります。

また、床の防音構造には共振を抑える工夫として、音をある程度吸収できる木製品を重ねる必要があります。例えば、無垢杉材のフローリングを仕上げ材として施工すると、無垢杉材は二次共振がなく音を吸収しやすいので音響と防音効果にプラスとなります。
さらに防音壁と床が共振しないように、施工要領の中に具体的な指示を行うことが重要です。

なお、狭い木造防音室では石膏ボードの使い方に注意が必要です。
石膏ボードは建築基準法など必要な耐火性能を確保するだけの最低限の使用量に抑えることが望ましいです。
*石膏ボードは遮音材であり不燃材ですが、多用すると音響が悪化するだけでなく、複数の周波数帯の音漏れが改善されないなど弱点があります。相乗効果が出しにくい建材です。

木造音楽防音室において、比較的薄い構造で防音効果を高めるには、木材と相性の良い相乗効果が期待できる防音材を併用する必要があります。
木造建物の限られた空間において、出来るだけ狭くしない音楽防音室を構築するには色々な工夫が必要です。

専門業者に依頼する前に、複数の専門家の意見をヒアリングすることをお勧めします。