防音相談は依頼者の考え方で決まる(2023年7月号)

マンションの防音設計に限定しても、入門書は沢山出版されていますが、実際に現場の設計及び施工を担当した専門業者が出版した専門書は殆どありません。机上の設計理論と現場の防音効果が乖離するという事例が多いのは、このような背景がありそうです。実際の現場担当の実務経験者の経験値が反映されていない専門情報は偏りが有り、十分に検証されていないコンテンツを含んでいます。

専門家による「防音相談」は多様なものが有り、依頼者(相談者)は、相手の特長をじっくりと見極める必要があります。

防音設計・工事は温故知新
一方、昔の伝統技術が継承されないと木造そのものが成立しませんし、まして防音工事という比較的特殊な分野は、新しい技術と伝統的工法がマッチしないと、うまく行かないのです。
このため、「情報と人材」を軽視する専門業者には対応できない分野だと、私は断言します。

木造の防音設計・防音工事については、伝統的な工法と最新技術のミックス型と言えるかもしれません。
なので、ベテランの防音設計技術者でも、新しい知識は必要です。取引先の防音材の最新状況を、絶えず把握する必要があります。

ですが、最新技術だけに飛びつく専門家はリスクがあります。それは検証事例が少ないため、弱点に気づかないで施工する場合があるからです。

一生の買物を無料相談に委ねるリスク
大手業者の無料相談会がいくつかありますが、過度な期待はしないほうが良いです。大半が自社の製品や見積事例を提示するだけの内容であり、個別の相談案件に適したアドバイスを本気でしようとする担当者は少ないです。
無料相談とは、その程度のレベルだと考えてください。しかも、カタログやホームページには自社の失敗事例など都合の悪い情報を載せることは絶対にありません。

例えば、ある有名な防音材メーカーや防音室メーカーが失敗した事例の相談を、防音職人では約30年間にわたり経験してきましたが、どこを調べても、その事実はネット上には出てきません。
内部情報は一部の専門家と提携先しか持っていないからです。
もちろん、木造防音室やマンション二重天井の防音設計など難易度の高い案件の情報を無料相談で得ることは出来ないと思います。

以上の内容を考慮の上、自分が求める専門家をじっくりと探してください。
絶対に企業の看板の大きさだけで判断しないようにご留意ください。
ちなみに、私の経験では担当者自らが投稿するブログの記事は、オフレコを含む生の情報が沢山含まれていますので、かなり参考になります。