音の周波数を考慮した木造防音室(2023年8月号)
音の周波数を考慮して防音設計を行うことは、木造に限らず、住宅及び音楽防音室の基本事項です。
*詳しくは次の記事をご参照ください。
→音の周波数と防音設計
たとえば、ピアノは、音の主成分が幅広い周波数帯にまたがっており、約30Hzから約4500Hzという音域の広い楽器であるため、周波数特性に偏りのある防音材や建築材だけでは弱点が生じます。
弱点を補完したり、相乗効果を出すことができるように、音響・防音構造を設計する必要があります。
どんなに優れた防音材でも透過損失にばらつきがあり、複数の素材を組み合わせて調整することが、比較的薄い防音構造を構築することを可能にします。
特に狭い防音室においては、重要な設計仕様となります。
木造建物は開放的な大きなスパンの部屋を造ると構造的な補強に費用がかかり、建築費を圧迫する場合があります。どうしても予算上の制約でコンパクトな防音構造を構築することになり、分厚い防音対策は物理的に難しいです。
一般的な建築材と防音材の相乗効果に着目すると、比較的薄い構造で音楽防音室を造ることができますので、新築計画においては、費用を抑えることが出来るだけでなく、間取りの自由度が大きくなります。
建築材・防音材の周波数特性は、実例において精密測定など検証データを積み重ねることで机上の理論を補正できます。
むしろ、机上の計算式通りに音楽防音室を完成させることは無理です。それは、質量則にシフトした計算式には欠陥があるからです。
木造防音室は、複数の経験則を確かめながら、建物躯体や内部構造など工法を含めて調整する必要があります。