マニュアルにはない実践的防音設計・防音材(2022年4月号)

今回は、他の投稿でも関連事項に言及してきましたが、改めて約28年間の研究資料の一部の重要情報を記載します。
これは、現在、情報サイトのコンテンツを更新する中で加える予定の内容の一部です。

住宅や音楽室の防音設計には欠かすことのできない防音材の特性分析です。

古い設計マニュアルだけでなく、最新の遮音設計マニュアルにも記載されていない内容です。主に、防音相談と担当した住宅・防音室の現場を精密測定したり、提携先の内部データを突き合わせて分析したものです。

おそらく、私が現役の防音設計エンジニアとして活動する期間において、書籍や論文として公開されることはないと思います。
あくまで、防音職人のウェブサイトのコンテンツとして、また私の頭の中に入れて活用するだけのマニュアルとなるでしょう。

では、そのさわりの部分だけご紹介します。

マンションなど二重床・二重天井の重量衝撃音
・現在のマンションの二重天井は、重量衝撃音(主に30Hzから500Hz)に対して共振体になっている。
・主な原因は比較的浅い天井内部のフトコロ空間における空気層の共振
・石膏ボードそのものを共振透過してくる。
・このうち、足音や重量物の落下音など重低音のインパクトは30Hzから250Hzである。
・騒音を軽減するには多層構造が必要。吸音層+制振+遮音層の構築で対処。
ちなみに、軽量衝撃音(主に125Hzから2000Hz)については、二重天井は減衰効果はある程度期待できるが、空気層は最低でも30センチ以上必要となる。
*20センチ程度の場合は、空気層に吸音材を充填する必要がある。

防音材の遮音効果
・硬質遮音材(石膏ボード・ALC・鉛ボード・硬質シージングボードなど)は制振効果が小さく、コインシデンスによる大幅に質量則を下回る遮音低下が起きる。板状の硬質遮音材の共通した特性である。
・このため、重ねて施工しても防音効果は限定的であり、逆効果になる周波数帯も生じるため、防音設計には注意する必要がある。
・遮音材は、面密度4kg/m2以下では中低音(約500Hz以下)の軽減効果が小さい。
・面密度約3kg/m2以下の遮音シートなどの製品をボードに重ねて施工しても効果を、殆ど体感できない。
・低音(約125Hz以下)を減衰させるには、面密度約6kg/m2以上の防音材が必要になる。柔軟性がある遮音材が望ましい。

なお、市販品および専門メーカーの受注生産品では、遮音ゴム、樹脂(塩ビを含む)、ブチルゴムを主成分とする遮音材があるが、このうちリサイクルゴムは品質が一定しないだけでなく、劣化しやすいので製品選定には注意が必要です。

※現在改訂中の情報サイト:木造防音のアプローチ