木造防音室のコンパクト防音(2022年7月号)

「防音室業界が今まで薄い高性能な音響・防音施工を実現できなかった原因は、素材(防音材を含む)の持つ周波数特性を踏まえた相乗効果、コインシデンスの回避対策について研究してこなかったことにあると思います。」
「費用対効果の小さい遮音パネル(鉛ボード、樹脂ボードなど)、遮音シート(厚さ1.0~1.2ミリ程度、面密度2.0~2.5kg/m2程度)、遮音ゴムパッキンに依存し、石膏ボードとグラスウールを重ねるだけの古い遮音設計マニュアルに支配されていたからです。」

上記の文章は、木造防音室を薄い構造でコンパクトに防音設計・施工するための重要な説明文で、当サイトの本文に記載されています。

これは、私が、現在の取引先の防音材メーカーの製品を現場で使い始めてから、約28年以上経過しますが、業界の現状は殆ど変わっていません。

その主な原因は、「木材の特性」や「木材と防音材の相乗効果」について軽視してきたことによるものです。
優れた防音材は、現在でもあるのですが、大半が受注生産になっていますので、一般市場には出ていません。特定の企業が使用しています。

また、通常、防音材は複数の製品を組合せて使用しますので、設計仕様・施工要領が不可欠です。どんな専門業者も、この内容を無料相談やウェブサイトで公開することはありません。企業秘密になっています。

私の知る限りでは、上記のようなコンパクト防音設計ができる専門家は、現役では防音職人以外は、すでに活動を停止しているようです。
エンジニアは高齢化しており、技術は継承されることなく、書籍にも記されていません。特殊な業界と言えると思います。

なぜ、大手企業は専門家と契約しないのかというと、コンパクト防音施工そのものが利益を追求していない事業だからです。企業にとって余り利益がないのです。