壁と窓の防音対策(2020年9月号)

窓の専門業者の宣伝や防音相談を鵜呑みにして、壁の防音対策のため、内窓に防音サッシュ・防音ガラスを取付ける工事だけ行う人が少なくないと思います。

相談者の話によると、内窓を取付ける防音工事だけ行うと約5から6dB程度、遮音性能が向上するようです。

これは既存の壁の遮音性能がD-30程度だったことが推測できます。通常の外窓の性能は概ねD-25ですので、これが内窓取付けで約D-40レベルになることによって、30-25=約5dBほど遮音性が壁全体で向上したわけです。

防音性能は弱い箇所の性能で決まるので、そうなります。本来、通常の気密性の高いサッシュに単板ガラス5ミリを取付けて内窓を施工すると遮音性が約15dB伸びます。なので、壁の性能がD-40であれば、壁全体の防音性能はD-40になるはずです。

窓だけでなく、壁の性能も同等以上に高めないと意味がないのです。窓の専門業者は建築の知識も防音設計のノウハウも持っていません。窓のことしか分からないのです。
そのような業者が、木造住宅の防音相談を行うこと自体がナンセンスです。

壁の防音対策も専門業者に相談しないと無駄になることがあります。

役に立たない遮音シートや弱点のある遮音パネル施工を安易に推奨する業者が少なくないからです。

ちなみに、大学の建築学科でさえ、防音設計の基本はあまり教えません。教えるのは、音環境の授業において、音には周波数特性があることと、空気音と固体音があることぐらいです。音響についても、コンクリート構造の建物(主に音楽ホールと音楽スタジオ)が中心であり、木造建物については殆ど教えないのです。

このため、建築士の大半は音響・防音設計が理解できません。概ね窓専門業者と大差ないのです。