木造パイプオルガン室の想い出(2020年12月号)

数年前、国立市内の防音相談で、ある有名大学教授からご自宅の木造パイプオルガン室の防音リフォームのコンサルティングを依頼されました。

プロが使用する大型のパイプオルガンより少しパイプの長さが短い楽器でしたが、天井との隙間が余りないので、床の防音対策は厚さ20ミリしか使えないことと、設置するリビングの壁を厚くしたくないという条件がありました。

音響・防音仕様と内窓取付けの計画をご提示したのですが、パイプオルガンを演奏される奥様が「内窓は掃除がしにくいので止めてほしい」と契約完了後に強く要望され、契約者であるご主人(大学教授)が困って、再度ご相談されたので、「窓ガラスを防音タイプに交換する」提案をして納得されました。
*施工後は、窓からの音漏れが激減し、奥様も防音効果に驚かれたそうです。

愛妻家である依頼者は、常に奥様の要望で揺れ動き(笑)、私に何度も相談されましたが、私の薄型防音施工案を気に入っていただき、無事に防音リフォームが完成したのでした。

床はDIYで私の指定する防音室用の防音材(受注生産品)とカーペットを重ねて敷き、気になる振動音もかなり軽減されたようです。近所への迷惑になるような音漏れは発生しなかったので、私が想定した第二段階の防音対策は不要でした。
*パイプオルガンはグランドピアノより音域が広く、低周波音も出るので状況を見て第二段階の対策も検討する予定でした。
*オルガンの音響板背面にDIYで吸音パネルを設置したのが効果的だったのかもしれません。

他の専門業者が提示する見積りは300万円以上の金額でしたが、私の防音計画による防音リフォームは、総額が半分以下で済みました。

依頼者は物事を明確に理解できる誠実な人物でしたが、かなりの愛妻家のため、自分の生活を犠牲にしてでも家族のためにリクエストされたのが非常に印象的でした。

ちなみに、防音工事は依頼者宅の新築を担当した知り合いの業者に、施主(依頼者)自らが工事契約されました。
最近は、コロナ禍の影響で自宅に音楽室やシアター・オーディオ室などを造られるリフォーム・DIY相談が増えてきているようです。

使用する楽器(音源)や間取り、近隣環境など総合的に勘案して防音計画を検討する必要があります。